円形脱毛症ってどんな病気?
なごみ皮ふ科 院長 齊藤 典充 先生
はじめに
皆さんは円形脱毛症と聞くとどんなイメージを持ちますか?
「ストレスが強すぎると頭髪が丸く抜ける病気でしょ」と思われる方が多いのではないでしょうか?
これは間違いとは言えませんが、全てではありません。
初めて円形脱毛症になった方からこれまで長く円形脱毛症と付き合ってこられた方まで様々な方がいらっしゃると思います。
円形脱毛症のことを少しでも正確に理解していただきたいと思い、この文章を書かせて頂きます。
円形脱毛症とは
文字通り頭髪が丸く抜ける病気ですが、頭髪ばかりではなく、眉毛や睫毛、髭や体毛にも生じることがあります。
頭部に1か所だけ脱毛が生じた場合には、円く抜けた形になります。
しかし、多発してそれぞれの脱毛斑がつながった場合や、頭部全体、頭部以外の部位の毛髪も抜けた場合には脱毛の形は円形ではなくなります。
原因は?
円形脱毛症はお子さんからご高齢の方まで男女を問わず生じます。
ストレスがきっかけで発症する方もおられますが、それ以外ではインフルエンザの後に発症した方や原因が全く思い当たらない方も多くいらっしゃいます。
近年円形脱毛症発症のメカニズムは解明が進んでおり、自分の白血球(リンパ球)が自身の毛髪を攻撃してしまうために毛髪が抜けるという自己免疫が関与していることがわかってきています。
経過は?
1か所だけ丸く抜けてその後脱毛が広がらない方の中には自然に治る方も多くいらっしゃいます。
しかし1か所でも脱毛の範囲が広がる方、脱毛が何か所にも増えてくる方は治療を受けた方がよいと思います。
治療を受けると数カ月後に発毛がみられることが多いですが、中には発毛しても脱毛を繰り返す方、なかなか発毛がみられない方がおられることも事実です。
治療について
円形脱毛症の治療は毛髪の抜ける速さや範囲によっていくつかの治療法があります。
治療は最初にステロイド薬の外用や塩化カルプロニウム液の外用、抗ヒスタミン薬の内服、セファランチンの内服、液体窒素療法が行われることが多いです。
さらに治りにくい場合には、頭皮にステロイド薬を注射したり紫外線を照射したり、軽いかぶれを起こすような治療(局所免疫療法)をします。
また急速に進行する場合にはステロイド薬を短期間点滴する場合もあります。
そして脱毛の範囲が広く一定の期間自然に発毛しない場合には、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を内服する治療も行えるようになりました。
治療の内容は皮膚科の先生とよく相談して選択してください。
また、これらの治療を行っても発毛がみられない場合や治療の効果がみられるようになるまでの間かつら(ウイッグ)を使用することも、気持ちを落ち着かせるためには有効な手段です。
最後に
円形脱毛症では毛髪が抜けることが大きなストレスになります。
その上治療効果がみられない、発毛してもすぐ抜けたなどでストレスをさらに感じてきた方も多いと思います。
周囲の方に髪の毛のことを話すのは相当な勇気がいることですし、悩みをご自身やご家族で抱え込んでいる方も多くいらっしゃると思います。
そのような時にはご自身の経験を語り合い、同じ悩みを持つ仲間の話を聞く機会をもつことは非常に大きな心の支えになると思います。
皆さんが穏やかに安心して毎日を過ごせる一助となれればと切に願っています。
よくある質問
生活編
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Q.シャンプーはどんなものを使ったらいいですか?
A.
過度に負担のかかるものでなければ、市販されているシャンプーを使っていただいても大丈夫です。
気になるようでしたら現在では、オーガニックシャンプーなど頭皮に優しいものも多くでています。
頭皮を清潔に保つことを心掛けましょう。 -
Q.カラーやパーマはしても大丈夫ですか?
A.
脱毛している時期のパーマやカラーリングは頭皮に大きな負担がかかりますので避けてください。
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Q.生活で気をつけることはありますか?
A.
まずは、バランスのとれた食事をとるように心掛けましょう。
そして、睡眠をたっぷり取りゆっくり身体を休めてください。また、ストレスを溜めないこともとても大切です。
そのためにも趣味の時間を作ったり、何も考えない時間を作ったり、運動をするなど自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。 -
Q.ウィッグを使用しても大丈夫ですか?
A.
ウィッグは、治療の妨げにならない医療用の製品であれば使用しても問題ありません。
精神的な苦痛を和らげるためにも、ウィッグは必要です。
医療編
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Q.何科を受診すればいいですか?
A.
脱毛症の専門は皮膚科になります。病院によっては、「脱毛外来」や「脱毛症外来」を設けている病院があります。
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Q.治る見込みはありますか?
A.
治療は長くかかることが多いようですが、毛根がなくなるわけではないので、毛が生える可能性はあります。
根気良く治療を続けていきましょう。 -
Q.市販されている育毛剤の効果は?治療中に使っても大丈夫?
A.
生え始めの軟毛が成長する時に効果があると言われていますが、効果には個人差があります。
治療中は、医師に聞いてから使用してください。 -
Q.ステロイド治療はよくないと聞きますが...
A.
外用薬に関しては問題ありません。内服薬は、医師の処方のもと適切に使用すれば大丈夫です。
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Q.円形脱毛症は遺伝しますか?
A.
円形脱毛症という病気そのものが遺伝することはありませんが、なりやすい体質が遺伝することはあるようです。
ただ、ご家族の方が脱毛症を発症したからといって、必ずしも発症するというわけではありません。 -
Q.原因は?
A.
これまでに、「自律神経障害」、「内分泌障害」、「毛周期障害」、「自己免疫疾患」、「感染アレルギー」等様々な説がありますが、はっきりとした原因はまだ解明されておりません。
現在は、「自己免疫疾患」であるという説が有力とされています。
「自己免疫疾患」とは、免疫機能が何らかの異常で、自分の身体の一部である毛根を異物と勘違いし、攻撃した結果、髪の毛が抜け落ちるといわれています。 -
Q.ストレスが原因ですか?
A.
ストレスが主因となることはないようですが、脱毛の誘因にはなり得ることはあるようです。
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Q.再発率は?
A.
自然に治ることもありますが、再発を繰り返しやすい傾向にあります。
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Q.漢方や針灸治療は効果がありますか?
A.
漢方や針治療は、科学的証明が乏しいため効果があるかどうかは不明です。
円形脱毛症診療ガイドライン
医療用かつらについて
とつぜん始まる脱毛は、外見に大きな変化をもたらします。
円形脱毛症の患者さんの一番の悩みは、やはり『脱毛』が目立つこと。
治療は長引くことも多く、また心理的にもつらい日々の生活の中で、自身のQOLを上げるための努力が必要となります。その方策の一つとして、治療と並行して多くの患者さんが医療用ウィッグやかつらを利用されています。
医療用ウィッグの使用を考える時、一番心配なのは治療の妨げになるのでは?と言う事ではないでしょうか?
しかし、日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2024年度版でも推奨度1、使用する希望がある患者には勧めるとされていますので、安心して使うことができます。
医療用かつらと、一般のかつらの違い
法的に決められていることではないのですが、医療用の場合肌や頭皮が、何かしらの原因で敏感な状態になっていることが多く、地肌にやさしい素材の使用、通気性、長時間使用しても負担が少ない、締め付け感が少ないなどの工夫がされています。
ただし、一般的に高価なものも多く、利用を迷う人も少なくないのが現状ですが、よく探せば自分にあった条件のかつらも多く販売されているので、専門店への一度の来店で決めることなく、いくつかのメーカーの製品を比較検討したり、病院の紹介などを参考にすることも大切になります。もちろん帽子、バンダナなど、自分にあったアイテムを利用することもよい方法です。
医療用ウィッグの種類や特徴、購入する際の注意
人毛は価格がやや高めですが、耐久性に優れており、カットやパーマ、カラー、ドライヤーやアイロンでのアレンジができます。
ただし、洗うとスタイルが保持できないので、都度ドライヤーなどでセットが必要になります。
人工毛は比較的安価でスタイルも崩れにくく、扱いやすいのですが、熱や摩擦に弱く毛先が縮れるため、人毛のように長期の使用には向きません。
ロングヘアも避けたほうがよいでしょう。ミックス毛は、価格、性質ともに人毛と人工毛の中間で、ミックスの割合により洗ってもスタイルがキープしやすく、お手入れが楽といわれています。
ミックス毛と表記されている製品も、人毛と人工毛の割合がさまざまです。
人毛が30~40%入っているウィッグの方が自然な風合いが楽しめます。
ウィッグを購入する際には、(1)既製品、(2)セミオーダー、(3)フルオーダーの3タイプから選ぶことになります。
価格、使い勝手などご自分のニーズにあった製品で、既製品、セミオーダーの場合には必ずサイズの調整ができることを確認して購入しましょう。